
子供向けの動物図鑑にもシベリアトラ、ベンガルトラ、スマトラトラぐらいは載っていることが多い。しかしライオンはせいぜいインドライオンがアフリカのライオンと区別されている程度だ。
トラは数が減少し、分布が局地的になってしまったため亜種区分がはっきりしているせいだろう。ライオンはまだ曖昧で研究者によっては12以上に分ける人もあれば、アフリカ産とアジア産だけの2亜種にまとめてしまう例もある。
亜種の区分は主として頭骨によっているが、説明が専門的で実物標本を前にしなければ理解できない。そのため雄のたてがみの違いが述べられるだけですまされることが多い。もちろん、たてがみは同じ地域でも個体変化が多く、また年齢による変化もある。あくまで参考程度と言うことで。また動物園のライオンはいくつもの亜種が混じり合った雑種が多く、一般的にたてがみの立派なものが珍しくない。
雄(7):全長268−292cm体重はこのうち1頭(全長268cm、肩高107cm)だけが記録されており腸を取り除いてからの計量で222kgもあった (Fauna of British India)。 頭骨2点は333、344mm(Rowland Ward)。 |
インド・ライオン Panthera leo persica
ライオンはかつてはインドからアラビア、トルコにまで生息していたが、現在アジアでライオンの生存が確認されているのはインド西部、グラジャトのガー森林保護区だけでその数は1995年の推計で304頭といわれる(H. Singh, 1997)。 1913年には20頭といわれていたのだからかなり回復したわけだが、その陰には人や家畜への攻撃があり、また保護区の面積(1451平方キロ)からすでに飽和状態にある。一部のライオンを他の地域に移す計画も策定され、実行されたがうまくゆかなかった。 インドでの減少は狩猟と開発によるものだが、西アジアでの絶滅の原因ははっきりしない。 インドライオンはしばしばたてがみが貧弱と言われてきたが、それは1830年代に採集されて大英博物館に送られたタイプ標本(若い雄)に由来したもののようで、インドライオン全般に共通する特徴ではない。一方で体毛はずっと密生していて、尾の先や肘の総毛もふさふさしているという。 |
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アビシニア・ライオン P. l. roosevelti
エチオピア西部からスーダン産。小型でたてがみは短い。 全長は雄で264−269cm、雌が234−244cm。 (グッギィスベルク、1961) セネガル・ライオン P. l. senegalensis モーリタニア、セネガルからチャド、カメルーンまで分布。 たてがみは赤味がかった黄色であまり発達していない。腹には(バーバリライオンと違って)毛の房はない。 雄(3):全長290−297cm。 頭骨2点は325mm(シェラレオネ)、370mm(ナイジェリア)。 |
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ソマリ・ライオン P. l. somaliensis
ソマリア、ケニヤ北部産。 小型で敏捷な体格で、尾は長め。たてがみは短い。 雄:全長267cm、肩高102cm。雌:全長229cm、肩高91cm。 (The Mammals of Somaliland, 1910) 雄:全長299cm、頭骨全長361mm(Rowland Ward)。 マサイ・ライオン P. l. massaicus ケニヤ、ウガンダ、タンザニア。ウガンダ産を別亜種ニャンザ・ライオン nyanzae とすることもあるが、一方ではザイール、アンゴラ産まで含めることもある。 中型でたてがみは長く、しばしば黒くなる。 雄:全長250−290cm、体重180−230kg(Kenya Wildlife Service)。 雌:全長210−250cm、体重 92−120kg(同上)。 雄(25):体重145−202kg(平均175kg)(Smuts, Robinson, Whyte)。 雌(15):体重 90−168kg(平均120kg)(同上)。 雄:全長299cm、頭骨全長373mm(Rowland Ward)。 |
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クルーガー・ライオン P. l. krugeri
南アフリカのトランスバール、オレンジ自由州産。現在では主にクルーガー国立公園。大型でたてがみは長くよく発達する。 雄(10):全長277−292cm、体重180−251kg。 雌(13):全長244−255cm、体重126−141kg。 (The Mammals of South Africa, 1951) 雄の頭骨2点は368、403mm。 |
カタンガ・ライオン P. l. bleyenberghi
コンゴ、ザンビア、アンゴラ産。 中型で全体に淡色。たてがみは短い。ベルギーのフレシュコップは東アフリカのライオンと区別できるほどの相異はないとして、マサイライオンに含めるべきとしている。 ザンビア産の雄2頭はそれぞれ 全長299cm(肩高122cm)、285cm(111cm)。 ローデシア産雄: 全長299cm、肩高109cm、頭骨全長387mm。 雄(26):体重172−216kg(平均193kg)。 雌(23):体重110−165kg(平均134kg)。 カラハリ・ライオン P. l. vernayi モザンビークからナミビアにかけて。中型で体色は淡く、たてがみは黄褐色で短く肩まで届かないといわれる。 雄:全長301cm、頭骨全長376mm。 雄(11):体重164−214kg(平均188kg)。 雌( 8):体重127−153kg(平均140kg)。 半砂漠地帯のライオンは、一般にたてがみが短めで、ずっと明るい色合いを持つ傾向がある。生息地の中で優勢な色調への適合のためである(グッギィスベルク)。 |
バーバリ・ライオン P. l. leo
北アフリカ産。大型で厚く長いたてがみを持ち、それが腹に達して房となり、また肩を越えて背中までも被っていた。現在のライオンに比べると胴が長く、四肢が短く、胸は分厚くたくましかったと言われる。Brehm によれば、全長235−287cm、肩高80−100cm。これは北アフリカのライオンが大型であるという、しばしば引用される記述とは一致しない。Alfred Pease は1頭のアルジェリア産ライオンが全長324cm(尾は76cm?)、肩高96cmだったと聞いている。
最後に確認されたのは、モロッコ(1922年)、アルジェリア(1893年)、チュニジア(1891年)、そしてリビアやエジプトではもっと早く、18世紀のうちに絶滅したようだ。原産地で得られたバーバリライオンの標本はオランダのライデン博物館に収蔵されている立派なもの2点があるのみである。1体は1823年にチュニジアで撃たれたものとされており、もう1点のラベルには単に北アフリカと記してある。
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モロッコのラパト動物園にはバーバリ・ライオンの血を色濃く受け継いだものが何頭かいて、そのうち雄1頭と雌2頭が1976年にワシントン動物園に送られた。このバーバリライオンを復活させようという試みは今も続いている。 フランス西部にあるサーブル・ドロンヌ(Sables d’Olonne)動物園にはバーバリライオンが飼われている。2006年7月には2頭の子も生まれている。バーバリライオンは現在約50頭が各地の動物園で飼育されているという(AFPBB)。これらは30年余り前にラバト動物園から始まったバーバリライオン復活計画の成果だろうか。
1996年、イギリスの動物保護団体、Animal Defenders はモザンビークの閉鎖されたサーカスから何頭もの動物たちを救出した。そこは自然保護区からの野生動物密輸の前線基地になっていた。その中には3頭のライオンがいた−バーバリライオンにたいへん似ているという。 |
豊かに発達した色濃いたてがみを持つケープライオンでさえ、「長く厚い腹部の総毛は、次第に短く細くなり、ついに胸前で消失する(ポコック)」のだ。またマサイライオンにもしばしば肩が見えないほど長いたてがみを持つものが現れるが、「腹に総毛のある東アフリカのライオンは見たことがない(グッギィスベルク)」といわれるほどだ。※ 1996年にバーバリライオン(の特徴を持つライオン)が発見されたことは上田さんから知らせていただきました。
ケープ・ライオン P. l. melanochaitus
南アフリカのケープ、ナタール産。
大型で、よく発達した濃いたてがみを持ち、腹にも毛の房飾りがある。ただしバーバリライオンとは異なり、胸には深い毛はない。
ケープでは1850年、ナタールでは1865年に最後のライオンが射殺されてしまったようだ。
ライオンの亜種のうちでも最大だったといわれているが、今日残されているわずかな標本からではそれを確認することはできない。
| 性別 | 全長(cm) | 肩高(cm) | 剥製の所在 |
|---|---|---|---|
| 雄 | 290 | 110 | ドイツ・シュタットガルト博物館 |
| 雌 | 258 | 107 | 同上 |
| 雄 | 276(尾は84) | 106 | ドイツ・ヴィースバーデン博物館 |
| 雌 | 268(尾は91) | 112 | − |
Pringle によれば Glen Lynden 付近で射殺されたライオンは全長が「ゆうに11フィートはあった」という。このやや曖昧な表現の訳は、頭胴長が8フィート(244cm)だったので、尾が少なくとも3フィート(91cm)はあっただろうからということらしい。わざわざ全長を推定しなくても頭胴長2.4mの方がよりインパクトがあると思えるが。
グッギィスベルク(1961)は記録に残されたわずかな測定例だけでは、「ケープライオンはさらに北のライオンより実際には大きくなかったのかもしれないとの、わずかの疑惑を払拭することはできない」という。